例えば、ヨットは低速の時は追い風のとき最もよく加速するが、ヨットの速度が風速に近づくと横風の方がよく加速するようになる。このことは一見直観に反する事実であるが、力学的には合理的に説明することができる。そして、このことや最適な帆の向きに関する力学的知識を持っていれば、競技する上で大きなアドバンテージになる。
身体運動においても、力学的に合理的な動作の中には我々の素朴な感覚に反するものがあること、つまり、非自明な力学的メカニズムがあると考えられる。例えば、運動方向とは別の向きに力を入れたり、あるタイミングで力を抜いたりすることが合理的なことがある。これを無意識に実行できるのが熟練者であるが、その理屈が理解されていないために形式知として言語化されず、指導に活かすことができなかったのではないだろうか。
非自明な力学的メカニズムは誰もが知りたいはずだが、不思議なことに、これまでその理論研究はほとんど進まなかった。その原因は恐らく、スポーツ科学が実験研究に偏重し根強く理論研究が軽視されてきたことと、物理学において「力学はわかりきっている」(非自明なことなどない)という思い込みがあったことと推測される。
本研究会では、非自明な力学的メカニズムに注目し、スポーツ動作のしくみを解明し、学校教育にも活用できるような合理的な指導方法の構築を目指している。当面は剣道を主な対象にしているが、柔道・野球等、他競技での議論も展開し始めている。
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| <16日> |
11:00 | 準備、打合せ |
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14:00 | 坂井 伸之 | 剣道における面打ち運動の物理学的理論 |
| (山口大) |
15:30 | 休憩 |
15:45 | 井上 あみ | 剣道における面打ち運動の物理学的理論の検証 |
| (船橋市田喜野井小) | −熟練者と初心者を比較して− |
16:25 | 竹田 隆一 |
剣道における面打ちの指導法に関する実践報告 |
| (山形大) | −物理学的視点に着目した指導法について− |
17:05 | 休憩 |
17:20 | 柴田 一浩 |
中学校武道必修化に対応した剣道の教材開発と指導実践 |
| (流通経済大) |
18:00 | 坂井 伸之 | 最近の研究から @腕の内旋の力学 |
| (山口大) | A科学における客観性とは? |
18:50 | 1日目終了 |
| <17日> |
9:30 | 藤田 裕太郎 |
剣道の面打ち運動における物理学的考察 |
| (山形大M2) | −左足の支点移動に着目して− |
10:10 | 一色 亮治 |
剣道の打撃時における腕の内旋についての考察 |
| (山形大4年) |
10:50 | 休憩 |
11:05 | 穂積 和 | 剣道における引き技のモルフォロギー的考察 |
| (山形大4年) |
11:45 | 山口 傑 | 剣道における踏み込みと抜けに関するモルフォロギー的考察 |
| (山形大4年) |
12:25 | 閉会 |
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自由にご参加下さい。準備の都合上、できるだけ事前にメールでお知らせ下さい。
- 記入事項: ご氏名・所属・専門分野・発表希望の有無
- 連絡先 : 竹田隆一 メール
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- 主な発表論文
- 坂井伸之・竹田隆一:武道・スポーツにおける科学的方法に対する誤解と理論研究の重要性、武道学研究 48(1), 35-41, 2015
- 坂井伸之・牧琢弥・竹田隆一:武道・スポーツの基礎となる棒の力学:特に慣性力の重要性、武道学研究 49(1), 1-14, 2016
- 竹田隆一・坂井伸之:剣道における「面打ち」運動の力学的研究、剣道ゼミナール(全国教育系大学剣道連盟)18, 25-36 (2016)
- 坂井伸之・竹田隆一・井上あみ・柴田一浩:実戦的面打ちを習得するために基本打ちの練習は必要か, 武道学研究, in press, 2018
- 過去の研究会
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