第4回「事理一致」運動 研究会
〜 理にかなった運動の探求 〜
2016年7月30〜31日@日本女子体育大
「タメ」とは何か? 「力を抜け」とはどのタイミングでどの部分の力を抜くのか? 武道・スポーツの指導において使われる言葉の大部分は抽象的・感覚的であり、真の意味や科学的根拠が明確でない。感覚的な言葉によって上達する人がいる反面、努力してもその感覚がつか めない人は少なくない。これまでの体育教育やスポーツ政策では才能ある人の技術を更に伸ばすことに重点が置かれ、英語・数学等主要教科の教育とは 対照的に、「誰もが最低限の技術を習得する」取り組みが二の次になってきた。 「誰もが最低限の技術を習得する」方法論が育たない主な理由は、スポーツ動作を対象とするスポーツバイオメカニクスが実験研究に特化され、自然科学本来の「複雑な現象をモデル化し基本法則から演繹的に結論を導く」という理論研究がが軽視されてきたことにあると思われる。法則とモデルに基づく理論研究がなければ、これまでの自然科学がそうであったように、現象の背後にある普遍的な原理は絶対に解明することができない。 「理論は実験で検証されなければ意味がない」とよく言われる。自然科学では確かにそうだ。しかし、スポーツ科学の目的は実験に成功することではなく、「実践に役立つ情報を得ること」である。したがって、理論を実験で検証しても目的が達成されたとは言えず、逆に、理論を実験で検証しなくても実践や指導に役立つ事が確認できればそれで十分である。 そこで我々は、武道・スポーツの専門家と物理学の専門家が協力して、「物理学的モデル研究」と「熟練者の運動感覚・実践映像の定性的分析」に基づく研究によって、理にかなった運動を解明し、科学的根拠の明確な指導法を構築することを目指している。 【第4回研究会の特徴】 剣道動作の原理について力学的な理解が進む一方で、課題も明確になった。それは、良い動作の形態が必ずしも1つではないことである。例えば面打ちには、右足を前に出した自然体から右足を踏み出す形態と、左脚を右足の後ろに運んでから右足を踏み出す「継ぎ足」と呼ばれる形態がある。そこで現在は、スポーツ運動学の形態分析の手法を取り入れている。すなわち、まず映像分析によって形態分類し、次に形態ごとに力学モデルによって分析し、良い動作の理屈を解明しそれに基づいた指導書を作成することを目指している。 【本研究会による研究成果(論文)】 [1] 坂井伸之・竹田隆一:武道・スポーツにおける科学的方法に対する誤解と理論研究の重要性、武道学研究 48(1), 35-41, 2015 [2] 坂井伸之・牧琢弥・竹田隆一:武道・スポーツの基礎となる棒の力学:特に慣性力の重要性、武道学研究 49(1), 1-14, 2016 [3] 竹田隆一・坂井伸之:剣道における「面打ち」運動の力学的研究、剣道ゼミナール(全国教育系大学剣道連盟)掲載予定 |
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参加は自由ですが、準備の都合上、できるだけ事前にメールでお知らせ下さい。
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2016-6-28 更新